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Geo-Seismo Technical Report 03

大地震時の揺れの推定方法を検証(1)

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1 概要

距離減衰式を用いた大地震時の揺れの推定方法について、防災科学技術研究所のK-NETの計測データを用いて、その妥当性を検討しました。対象とした地震は、過去に発生した大地震です。

2 相関図の作成と倍率の算定

大地震時の揺れの推定では、各計測ポイントにおいて、距離減衰式による理論最大加速度と計測最大加速度との相関図を描き、回帰直線を求めて、この傾きを理論最大加速度に対する計測最大加速度の倍率とします。 想定震源断層による地震発生時の最大加速度については、計測ポイントと断層の距離や想定マグニチュードから距離減衰式により求まる理論最大加速度に、この倍率を乗じて推定値としています。

この方法論の妥当性を、防災科学技術研究所のK-NETの計測データを用いて検討しました。 K-NETでは、自由地盤上に設置された地震計で計測が行われています。最初に、プレート型ではないと考えられる過去の大地震について、この地震で最も大きな最大加速度が観測された地点を選定しました。 この地点における計測データのうち、大地震時のものを除く、比較的小さな加速度が計測された地震時のデータを用い、理論最大加速度と計測最大加速度の相関図を描き回帰式を求めました。 これを、想定震源断層以外の震源により発生した地震についての回帰式と仮定しました。なお、回帰式を求めるためのデータは、震源距離が200km以下のものとしました。 次に、想定震源断層による地震の代わりに、大地震時の震源距離、マグニチュードを用いて理論最大加速度を求め、このときの計測最大加速度に対して相関図上にプロットしました。 仮に、ここで用いている方法が妥当なものであれば、大地震時のプロットは回帰直線の近傍に打たれるはずです。 言い換えれば、大地震時の計測最大加速度は、その理論最大加速度に回帰直線の傾きである倍率を乗じた値に近いはずです。 検討対象とした大地震は、次のとおりです。なお、Mは気象庁マグニチュードです。

①2000年10月6日 鳥取県西部地震(M7.3)
②2004年10月23日 新潟県中越地震(M6.8)
③2005年3月20日 福岡県西方沖地震(M7.0)
④2007年3月25日 能登半島地震(M6.9)
⑤2007年7月16日 新潟県中越沖地震(M6.8)
⑥2011年3月12日 長野県北部地震(M6.7)

結果を以下の図に示します。 中越地震の十日町と中越沖地震の柏崎では、推定値を超える大きな加速度が計測されていますが、それ以外は大地震についてのプロットが回帰直線に近い場所にあり、ここで用いている方法が妥当であることが示されています。